第一種放射線取扱主任者試験のすゝめ

これはなに

 この度、令和3年度の第一種放射線取扱主任者試験に合格しました。要望があったのでその備忘録的なものを残しておこうと思います。

 

そもそも

 放射線取扱主任者試験とはどういうものか、についてお話します。

 まず、「放射線取扱主任者」という国家資格があり、これは日本の「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」に基づいています。日本では、放射性同位体放射線発生装置を使ったり売ったり貸したりする時は、事業所ごとに最低一人、この資格を持った人が必要です。簡単に言うと、放射線は危ないので専門家が管理してね、ということです。放射線取扱主任者には第一種から第三種の三種類あり、第一種が最上位の資格で、なんでもできます。当然資格を取得するのも最も難しいです。第二種、第三種はできることが制限されています。

 さて、どうすれば放射線取扱主任者の資格を得られるかというと、第一種と第二種は一年に一回原子力安全技術センターが実施する「放射線取扱主任者試験」に合格し、その後に講習を受講して修了試験に合格しなければなりません。第三種は講習と修了試験のみとなります。今回、私は試験に合格しただけで講習は受講しないので、放射線取扱主任者の資格は有していません。そして、当面の間、講習を受講する予定はありません。何故かというと、第一種の講習の費用は最低17万円かかるからです。

 

 じゃあなんで試験受けたの?と聞かれることがありますが、

放射線取扱主任者試験に合格していれば、講習はいつ受けてもよいから

京都大学工学研究科原子核工学専攻の院試の専門科目が一部免除になるから

・国家試験を受験することに興奮する体質だから

というのが主な理由です。院試の勉強に当てないといけない時間を減らせるのは非常に魅力ですね。ちなみに放射線取扱主任者の資格を取るとX線作業主任者」γ線等価写真撮影作業主任者」という二つの資格がくっついてきます。お得ですね(?)

 

本題

 この試験は大学生の夏休み中である8月にあります。当然、万全の準備をして試験に臨む予定だったのですが、試験一週間前の間に山に登ったり2泊3日で丹後に行ったりなどの予定が入っていたため、参考書を本格的に読み始めたのは試験本番の2日前になってしまいました。ネットで見てる感じ、皆さん300~400時間ぐらい勉強してましたし、周りの合格者も遅くとも試験1週間以上前から勉強を始めていたので、受かりたい人はそれぐらいした方がいいと思います。受験会場は「大阪」なのに受験会場地は「神戸大学」で遠かったのでホテルを取りました。試験当日の朝ギリギリまでのんびりできる(私は朝食サービスを無視して必死で勉強していましたが)のでホテルは取った方が良いです。

 

 初めに買った参考書を紹介します。まずは放射線概論です。

store.shopping.yahoo.co.jp

 超定番と言われる参考書です。これを本当にちゃんと一周すれば十分合格できると思いますが、900ページ以上あり、膨大な時間がかかります。また、要点がまとまっておらず分かりにくい(原子核工学専攻の某先生のお言葉)という話もあります。私はヤフオクで1000円ほどで落札しましたが、到底読んでいる時間はないと考え、1回しか開きませんでした。

 次に「放射線取扱の基礎」です。

www.kinokuniya.co.jp

 これを買ってなかったら2日で合格は絶対にできなかったです。各科目が100ページちょいにまとまっており、全部で500ページ程度です。要点が非常に分かりやすくまとまっており、これに書いてあることが理解できれば合格できる力は十分あると思います。

 

 さて、第一種放射線取扱主任者試験の試験科目は物理・化学・生物・実務・法令です。得意か苦手かで勉強しないといけない時間をかなり分けないといけないと思いますが、私は物理を一番勉強しました。物理は一般的に想像される物理の内容とは微妙に異なるため早めの勉強をお勧めします。化学は高校化学が理解できていればそこまで勉強する必要はないと思いますが、私は高校化学が苦手だったので苦労しました。生物は暗記ゲーで、実務は総まとめみたいなものです。法令に関しては、私はいろいろな国家試験を受けていて慣れているので参考書を1周しただけで合格点は取れましたが、慣れていない人はしっかり対策した方が良いと思います。結構な量があります。

 この試験を受ける上でかなり重要なのが、放射性同位体の種類・半減期放射線の種類とエネルギーを覚えることです。この動画に載っている核種をすべて覚えれば問題ないでしょう。化学・生物・実務で結構聞かれるので、絶対に覚えた方がいいです。試験2日目の朝に友人にこの動画を教えてもらったおかげで合格できたといっても間違いではないです。結構な量があるので地道に覚えるのが良いでしょう。

www.youtube.com

 

 私は時間がなくて「放射線取扱の基礎」は1周しかする暇がなく、過去問も解く余裕がほとんどなかったので危ない合格となりましたが、上の動画の放射性核種をしっかり覚えつつ、「放射線取扱の基礎」をしっかり理解しながら2周ほどして、過去問を3年分以上解けばかなり余裕がある状態で合格できると思います。全ての国家試験に言えることですが、過去問は絶対に解いた方が良いです。私は過去問を解く暇を作ることができなかったのをかなり後悔しました。

 

 さて、放射線取扱主任者試験で一番大切なことは「諦めない」ことだと思います。試験は2日に及び、5科目もあるのでかなり疲労がたまり、帰りたいという感情がモクモクと湧いてきます。令和3年度は1日目最後の物理の問題が変化球で、帰りの電車は受験生たちがお通夜ムードでした。次の日の受験生も確実に減っていました。正直私も落ちたと思ったのでかなり帰ろうか悩みましたが、結果的に物理は7割超えてましたし、足切りの5割切りというのはハードルとしてはそこまで高くないというふうに感じます。試験会場まで行ったら、落ちたと思ってもとりあえず全ての試験を頑張りましょう!

 

合格発表について

合格発表まではめちゃくちゃ長いです。マークシート試験なのに試験終了から2か月ほどあります。また、合格発表の明確な日程が知らされないため、かなり焦らされます。過去の合格発表日を見てる感じ、10月22以降の最初の月曜日が合格発表となっていますし、今年もそうでした。合格発表は官報(日本が出している機関紙)に受験番号と名前が載ります。合格発表としてはかなり珍しい形式なので面白かったです。その3日後ぐらいに合格証が届きます。

 

最後に

 受験会場が神戸大学だった場合、近くに南京町があるので夜は美味しい中華料理を食べるとよいです。

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